感想:ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

細田守特集の続き。今回は、細田守の初長編劇場作品「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」を観てみました。

例によって原作を知らないので、事前に WikiPedia で調査。(便利だな、WikiPedia)

映画内では人物説明がほとんどないので、「登場人物一覧」は特に参考になりました。

感想: ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島

約90分。楽しく観ることができました。

美しいオープニングから始まり、テンポの良いギャグシーンの連発、しかし徐々に物語りは暗さを帯びていき、最後には悪夢のようなグロテスクな展開へと変化してきます。ジェットコースターのように激しい落差のある映画で、心象的に非常にスリルのある映画体験が楽しめる珍しい映画だと思います。

心象的な落差の創出という観点から見て、絵柄や画面の色調のコントロールも丁寧に行われていて素晴らしい。なんつうか小さなお子様が見たら、前半ゲラゲラ笑っていたくせに、後半はマジ泣きしだすんじゃないかという感じ。印象に残る映画が良い映画とするならば、この映画は子供心にトラウマを残すぐらい印象的な映画なんじゃないだろうか。

時をかける少女やデジモンは繊細な演出が印象的でしたが、この映画は力強いというか力技な演出が印象的でした。細田監督フルスイング、という感じ。

ちなみにこの映画、DVD化にあたって一部修正が入っているそうです。具体的な相違点はよくわかりませんが、劇場公開時に比べて後半の描写が多少マイルドになっている模様。

というわけで、けっこー面白かったよん。というのが個人的な感想なのですが、以下周辺的な話を少々。

シリーズ映画としての「オマツリ男爵と秘密の島」

ONE PIECE という作品は、週間ジャンプに連載されているコミックが原作で、単行本ですでに40巻以上。TVアニメとしても、5年以上続いている人気作品で、「オマツリ男爵と秘密の島」は、ONE PIECE の映画版としては6作目(短編含む)に当たるそうです。

当然、この映画を劇場に観にいく人の大半は、既存シリーズのファンであることが多く、今までのシリーズの延長線上にあるものを期待していた模様。

で、この映画が ONE PIECE ファンの期待に応える映画になっていたかというとかなり微妙。ネットで感想を漁ってみると、絵柄がTVシリーズのテイストを継承していないとか、レギュラーキャラクターが後半ほとんど活躍しないとか、そもそもこんな話は ONE PIECE じゃない、とか、違和感を感じた人が多かった様子。

一方で、シリーズと切り放して完全に独立した映画として成立しているかというと、これもちょっと微妙。基本的な設定については自明のものとして説明が省略されているせいもあって、唐突にこの映画だけ観ても理解できない描写が多い。

というわけで、いまひとつターゲットのはっきりしない映画になってしまっている気がする。

「オマツリ男爵と秘密の島」の背景

本作品の前に、細田守の長編初監督となるはずだった幻の企画が存在する。スタジオジブリの「ハウルの動く城」がそれで、当初細田守監督作品として準備が進められていたにも関わらず、最終的には宮崎駿監督作品として世に出ることになった。(監督交代の経緯については不明)

これに関連して、細田守はインタビューでこんな発言をしている。

小黒 で、細田さん的には「仲間」っていうのは必要なんですか?
細田 ん、どういう事!? 仲間は必要ですよ、もちろん。……ああっ、そうか!? そうそう。多分、そういう事だと思う。これは脚本の人には悪いんだけど、僕がああいったかたちで映画をまとめたのは、単純に観客にとって面白いものにするためだけではなくて、僕自身の直面する問題があったからだと思う。要するに『ハウル』の問題があるんですよ。これ、載っけていいのかなあ、ハハハハハ(苦笑)。
小黒 いや、今日の話で一番面白いところだよ。
細田 そうなんだよね。要するに、そうなんですよ。『オマツリ男爵』という映画は、なんの映画かというと、僕のジブリ体験がね、基になってるの!(苦笑)
小黒 なるほど!
細田 ホントに! 実は。実は、というか必然的に。
小黒 ああっ、分かった。オマツリ島がジブリなんだ!
細田 そうそう、そうですよ! 要は、相手の懐に入って、アッハッハ! イーブンじゃない戦いを強いられた時に、アッハッハ! どうなるかという話なんですよ。

WEB アニメスタイル『ONE PIECE ―オマツリ男爵と秘密の島―』 細田守インタビュー

このインタビューはインタビューアも含めて素晴らしいので、ぜひ全文を読んでみてください。

実際に「オマツリ男爵」を観てみた印象としては、映画に託して恨み節を述べたかったとか、スタジオジブリに巣食う巨悪を告発したかった、とかいうわけではなくて、仕事上の事件をきっかけにして人と人との関係というものを考え直す機会があって、それが映画にも反映されてしまったということだと思う。

子供向けアニメ(に限らないけど)では、愛とか友情とかある意味心地よい人間関係がフォーカスされることが多いけれど、それと重なりあうようにして信頼だの尊敬だのという軸もあるし、時には多少嫌な思いをしながらも知らない人と新しい関係を築いていくことも重要ではある。

その辺のきれいに割り切れないいろいろな思いが、この映画に複雑な印影を与えたひとつの要因となっているのかもしれない。

まぁ、なにはともあれ、今となってはハウルの動く城にまつわる、監督の個人的な体験を完全に無視してこの映画を評価することは難しい。さらにいえば、「オマツリ男爵」でみせた逡巡なくして、「時をかける少女」ののびやかさは成立しなかったんじゃないかとも思う。

いずれにせよ細田守という人を語るときに、「ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島」という映画は絶対に無視できない重要な作品だろう。

まぁ、本来映画はその成立背景など無視してそれ単独で評価されるべきなのかもしれない、とも思うのだが。

by Myfuna at 2006年10月28日 07:04 Comment(0) TrackBack(0)
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